一、 コンチェルト・レクイエム(1981年)/三木稔作曲
〔二十絃箏独奏〕熊沢栄利子
〔笛〕I西川浩平 II竹井誠
〔尺八〕I米澤浩 II阪口夕山 III渡辺淳 IV原郷隆 V元永拓 VI加藤秀和
〔胡弓〕多々良香保里 〔三味線〕山崎千鶴子 〔琵琶〕首藤久美子
〔二十絃箏〕桜井智永・久東寿子 〔十七絃〕田村法子・佐藤里美
〔小鼓〕尾崎太一 〔大鼓〕島村聖香 〔締太鼓〕望月太喜之丞 〔楽太鼓〕黒坂昇
〔指揮〕田村拓男
二、 琵琶協奏曲〜校倉による幻想(1977年)/長沢勝俊作曲
〔琵琶独奏〕田原順子
〔笛〕西川浩平 〔尺八〕I竹井誠 II元永拓
〔三味線〕守啓伊子 〔琵琶〕首藤久美子
〔箏〕I三宅礼子 II田村法子 〔十七絃〕久本桂子
〔打楽器〕黒坂昇・盧慶順
〔指揮〕田村拓男
三、 太棹協奏曲(1966年)/牧野由多可作曲
〔太棹三味線独奏〕田中悠美子
〔尺八〕米澤浩
〔箏〕I桜井智永 II久東寿子 III高橋はるな IV三宅礼子
〔十七絃〕久本桂子
〔打楽器〕盧慶順
〔指揮〕田村拓男
四、 笛協奏曲「富嶽三章」(2006年)委嘱・初演/福嶋頼秀作曲
〔笛独奏〕越智成人
〔尺八〕I竹井誠・阪口夕山 II元永拓・渡辺淳 III加藤秀和・原郷隆
〔三味線〕工藤哲子・穂積大志
〔十三絃箏〕桜井智永・三宅礼子・高橋はるな
〔二十絃箏〕熊沢栄利子・田村法子・佐藤里美
〔十七絃〕久東寿子・久本桂子
〔打楽器〕尾崎太一・望月太喜之丞・島村聖香
〔指揮〕福嶋頼秀
◎ロビーコンサート(第一生命ホール4階ロビーにて、18時40分より)
〔琵琶弾語り〕細川華鶴子 「鶴」 /坂田美子作詞作曲
第一生命ホール(晴海トリトンスクエア)
主催:特定非営利活動法人 日本音楽集団
NPOトリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール
助成:平成18年度文化庁芸術創造活動重点支援事業
コンチェルトの名曲誕生の背景 田村拓男
日本音楽集団の創立時には、改革精神が旺盛で優れた技能と個性を持ったメンバーが揃っていました。それは今日にもゾリステン的な存在として引継がれていると思います。作曲家を触発し、特定の演奏家をイメージした作品やコンチェルトなどの作品がたくさん生れました。私には、集団の数々のレパートリーと同時に、その曲を初演した時のソリストやメンバーたちの顔が走馬灯のように浮かんできます。
野坂恵子さんは、二十絃箏を開発して新しい箏のための作品を多くの作曲家に委嘱しました。数々の新曲の名演は作曲家を触発し「コンチェルト・レクイエム」が生れました。多難であった昭和が終わりを告げようという時代背景の中で生れたこの曲は、「音楽の役割り」と「時代変遷」とのかかわりを強烈に体験させてくれた曲でもありました。けだし名曲。故・山田美喜子さんは創立メンバーの中では一番の高齢であったにもかかわらず、早くから琵琶の五線譜演奏を志し、後進を育て、リサイタルのために委嘱して誕生したのが「琵琶協奏曲」です。「太棹協奏曲」は、NHKラジオ番組「現代の日本音楽」(1964年?72までの8年間放送)のために数々の委嘱を行う中で誕生した曲であり、NHK邦楽技能者育成会事業の開始(1955年より)とともに現代邦楽隆盛の背景にはNHKがあることは忘れてはなりません。
今回「笛協奏曲」を自作自演(指揮)する福嶋頼秀さんの出現を喜ばしく思っています。来年1月定期「明日への扉を開く」は、若手メンバーが推進するなど、新しいエネルギーの台頭に期待しているところです。(日本音楽集団 代表)
【曲目解説】
コンチェルト・レクイエム 三木稔作曲
人の思いや魂が石の響きにより一点に集まり、曲が進み音が重なるにつれ大きな世界へと解き放たれ、やがて石の響きに導かれ自然へと帰り安らかな時を迎える。25年前野坂惠子先生の初演を聴いた時、深く凛とした美しい音楽に心が震え、いつか演奏してみたいと思ったものでした。演奏家としての多くの時を音楽集団の仲間達と過ごしてきました。今回その仲間たちに包まれながら演奏できる幸せを感じています。今まで培ってきた私なりの音と思いでホールを満たして行く時をお客様と共に出来れば幸いです。(熊沢栄利子)
琵琶協奏曲〜校倉による幻想 長沢勝俊作曲
『わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪のうれしからまし』。万葉集に納められている光明皇后の詠まれた和歌の中の一首、夫・聖武天皇に奉られた和歌との事です。仏教を篤く信仰し、非田院・施薬院をもうけ貧民を救済なさった方。奈良・法華寺の御本尊【国宝十一面観音】は、そのおおらかな、素直な、力強く心の暖かい皇后をモデルにしたものと伝えられています。《校倉》は聖武天皇なきあと皇后が夫を偲びその遺品を収めた倉。今「校倉による幻想」の譜面を前にして、1200年以上の時を隔て、天平の時代に生きた美しい皇后・光明子と向かい合わせて頂いた様な気がいたします。(田原順子)
太棹協奏曲 牧野由多可作曲
私がこの作品に出会ったのは、1984年の日本音楽集団第84回定期演奏会であった。1966年にNHKの委嘱で作曲された、日本で唯一の太棹三味線コンチェルトである。作曲家自身の作品解説によると、「〜『浄瑠璃及び歌舞伎の世界』の中に生きつづけてきた太棹三味線。日本人の生活、義理、人情のしがらみ、その喜びや悲しみ、せつなさを、赤裸にする音。我々の体臭を、そのまましぼり取ってきたようなどろっとした残酷さと、艶と深みのある響き。その音と、伝統的な音型を生かしながら、いかに今日に生かし、新たな光を興へることを可能にするか〜」とある。今回の演奏は40年前に作曲された「現代邦楽」と自分自身の「いま」との接点を探るという課題を抱えてのチャレンジとなった。(田中悠美子)
笛協奏曲「富嶽三章」 福嶋頼秀作曲
「富嶽」とは、葛飾北斎の富嶽三十六景からとったものです。北斎は三十六枚の版画の中で、富士山と当時のさまざまな日本の風景・人々の生活を描きました。
私はこの曲の中に江戸時代の音階やリズムを部分的に取り入れました。そして、それを自由に変化させることで、さまざまな音楽に親しんでいる現代の聴衆にも、新鮮で生き生き響く音楽をめざして作曲しました。
第1楽章は『日本橋』の版画のよう。テクニカルな笛のフレーズは、朝靄の中から人々の活気がみなぎる感じです。第2楽章は険しい山道に霧が立ちこめるかのような妖しい雰囲気の、ゆっくりとした音楽。第3楽章は荒波の『神奈川沖浪裏』のような勢いで、笛とともに打楽器群も活躍し華やかに曲を閉じます。(福嶋頼秀)
一昔前には、都心からも美しい富士山を眺める事が出来たようですが、昨今ではその姿を見る事が困難になりました。
人々の生活・景色を情緒溢れる姿で描いている「富嶽三十六景」からは景観を守って行く事の大切さを私達に訴えかけているように思われます。
この度の笛協奏曲は「懐かしい日本の風景を思い描ける様な作品に」と福嶋氏にお願いしましたところ、日本の象徴゛富士山゛を描いた「富嶽三十六景」を元にした『富嶽三章』という作品が誕生しました。
本日は日本の楽器で美しい富士山を精一杯表現したいと思います。(越智成人)
【ソリストプロフィール】
熊沢栄利子
砂崎知子氏に師事。NHK邦楽技能者育成会卒。1978年日本音楽集団入団。81年NHKオーディション合格。尺八の米澤浩とのジョイントリサイタルシリーズが契機となり、アジアに目を向けた演奏活動も展開する他、2001年から米澤と開始したヨーロッパ・コンサート・ツアーは、2005年11月までにオーストリア・ドイツ・フランス・イタリアで35公演を数え、内外で活動の場は広い。現在、日本音楽集団団員。《ペンタジア》メンバー。《島根邦楽集団》顧問。生田流宮城社教師。http://zipangu.com/kumazawa/
田原順子
小さなホールで客と語り合いながらのコンサートを好んで続ける琵琶奏者。「平家物語」を代表とする伝統的な語り物はもちろん、多くの創作語り物や現代音楽を演奏し、他ジャンルとのコラボレーションなど、現代人の感覚にあった様々なかたちの《琵琶芸術》を模索し続けている。故・山田美喜子、人間国宝・山崎旭萃両師に師事。1982年、琵琶楽コンクール第一位。
田中悠美子
東京芸術大学楽理科在学中より文楽の人間国宝、故・野澤錦糸に義太夫三味線を、語りを女流義太夫の人間国宝、竹本駒之助に師事し、女流義太夫の三味線弾きとして活動。現在は、国内外における現代音楽の演奏、ニュー・ミュージックのフィールドにおける即興演奏、前衛音楽劇におけるパフォーマンス、演劇・ダンスとのコラボレーションなどの活動を展開。1990年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞。99年、日本音楽コンクール委員会特別賞受賞。兵庫教育大学大学院助教授。
越智成人
長唄囃子笛を望月太八、福原徹彦の各師に師事。長唄囃子を藤舎華鳳師に師事。長唄囃子望月流十二代目家元望月太左衛門より望月翔太の名を許される。
第38期NHK邦楽技能者育成会修了。東京芸術大学音楽学部邦楽科別科修了。
日本音楽集団団員として「2001プラハの春音楽祭」に出演。奈良薬師寺大講堂落慶式にて奉納演奏。厚生労働省、雇用・能力開発機構提供、職業総合情報拠点「私の仕事館」に出演中。張芸謀監督の映画「LOVERS」のオープニングをソロ演奏。
【作曲者プロフィール】
福嶋頼秀
1967年前橋市生れ。慶應義塾大学法学部卒。東京フィル、日本フィル、東京都響、オーケストラ・アンサンブル金沢、フランツ・リスト室内管(ルーマニア)等からの編曲依頼等多数。現田茂夫、足立さつき、錦織健、佐野成宏、古川展生の各氏等が演奏。2003年チョン・ミョンフン監修・指揮のコンサートの企画/編曲を担当。土曜ワイド劇場や月曜ドラマスペシャルの劇伴音楽、ニュースステーションのジングル等の音楽も担当。
|