日本音楽集団「研究会」と今回の定期演奏会
日本音楽集団「研究会」は、邦楽器合奏の恒常的研究と新しい作品の創出を趣旨とし、若手の団員を中心にして2000年に発足いたしました。「研究会」では、これまで定期的に試演研究を実施し、その研究発表の場として、毎年の公開コンサートを実施して参りました。
この<第186回定期演奏会〜明日への扉を開く〜>は、その研究成果の集大成として、音楽集団の在籍作曲家による5曲の作品をご紹介
いたします。作曲家と演奏家の共同作業により舞台を作り上げるという、音楽集団の伝統的な手法を継承しながらも、伝統音楽に対して新たなアプローチを試みた意欲的な内容となっております。
一、トポロジカル・スペース(2001年) 秋岸寛久作曲
二、尺八三重奏(2004年) 川崎絵都夫作曲
三、新曲(委嘱・初演) 真鍋尚之作曲
四、寓懐あまつかぜ ―5人の和楽器奏者のための―(委嘱・初演) 尾形敏幸作曲
五、四つのプロフィール(1999年) 福嶋頼秀作曲
津田ホール JR千駄ケ谷駅下車
18:30開場 19:00開演
前売 A5,000円 B4,000円 C3,000円
当日 A5,500円 B4,500円 C3,500円
ヤングシート:25歳以下の方にB,C席を割安料金で。
前日午前中までに日本音楽集団事務所へご連絡ください。
主催:特定非営利活動法人 日本音楽集団
助成:平成18年度文化庁芸術創造活動重点支援事業
トポロジカル・スペース 秋岸寛久作曲
尺八、三味線、二十絃、十七絃、打楽器の五重奏です。
拍子感のない自由な部分と、拍子の枠の中で正確なアンサンブルが要求される部分。
それぞれが主張しあう部分と、協調する部分など、いろいろな対比が盛り込んであります。2001年に音楽集団の定期演奏会で初演されてから、何度か再演をしていただきましたが、そのたびに新しい「スペース」が生まれるような気がします。今回の演奏も楽しみです。
(秋岸寛久)
秋岸寛久プロフィール:
1962年横浜生まれ。中学生の頃より作曲を助川敏弥氏に師事。東京音楽大学作曲科に入学し、作曲を浦田健次郎、三木稔の各氏に師事。同大学研究科を修了後、日本音楽集団に入団。日本フィル九州公演20周年、横浜国大グリークラブの創部50周年、NHK邦楽技能者育成会45期等の委嘱や、市川猿之助スーパー歌舞伎「オオクニヌシ」の音楽等を手がける。
尺八三重奏曲 川崎絵都夫作曲
尺八奏者の方からの「スタンディングで演奏出来てかっこいい尺八三重奏曲があるといいですね」という希望に大いに賛同して作曲しました。三人の奏者の対話やリズミカルな部分など、イキの良い若手尺八奏者の競演を御堪能下さい!
(川崎絵都夫)
川崎絵都夫プロフィール:
作曲家。1959年東京生まれ。魚座。A型。東京芸術大学音楽学部作曲科卒業後、オーケストレーターとして活動。邦楽器、合唱、室内楽などの委嘱作品発表を始める。舞台音楽も多数手掛ける。邦楽合奏作品は親しみ易い作風で広く演奏されている。主な邦楽器作品…「青葉之賦」「春うらら」「箏・ふたつ」「星涼之賦」(以上家庭音楽会出版部)「花織」「蒼き狼の夢」。現在日本作曲家協議会会員。教育出版社・中学校音楽科教科書著者。
(委嘱作品) 真鍋尚之作曲
2005年より日本音楽集団の若手からなる研究会との共同作業により「三味線バージョン」「箏バージョン」の試演を重ねている。このような実験的な活動は作曲家にとってのみならず演奏家にとっても非常に有意義でありより完成度の高い作品を生み出す原動力となることであろう。
(真鍋尚之)
真鍋尚之プロフィール:
洗足学園大学(専攻−作曲・声楽)、東京芸術大学邦楽科雅楽専攻卒業。
第18回神奈川県合唱曲作曲コンクール1位なしの2位。第1回国立劇場作曲コンクール優秀賞(1位)受賞。東京・邦楽コンクール第1位など作曲及び演奏での受賞多数。2000年より紀尾井ホール、浜離宮朝日ホールにてリサイタルを開催。笙という楽器の可能性を追求した演奏会を開いてきた。CD「真鍋尚之笙リサイタル」も発売。小野雅楽会、十二音会会員。
寓懐あまつかぜ ―5人の和楽器奏者のための― 尾形敏幸作曲
桑名小弓さんの詩「寓懐あまつかぜ」は、多くの示唆と啓示に富んでおり、それは人類の棲む“この世”が仮の世であり、しかも一瞬に過ぎないことを謳う。また、「寓懐」とは「他のものに心を託す」という意味であり、私の和楽器に寄せる想いの象徴でもあろうか。前回試みた無調整、不定量記譜の「豊饒なる国のはてで・・・」とは違った、本来の魅力溢れる和楽器たちそのものが、自らの“想い”を“謡う”ように、一音一音が互いに呼応することを目指したものである。
(尾形敏幸)
尾形敏幸プロフィール:
東京生まれ。東京学芸大学大学院修了。大学院在学中に笹川賞、現朝日作曲賞等を受賞。平成10年には文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞。合唱の委嘱作品が多いが、近年はオーケストラ、吹奏楽、アンサンブル、や軽音楽の分野、及び理論書の執筆等にも活動領域を拡大。また、声楽や合唱の伴奏ピアニストとしてのキャリアも多数。現在、日本現代音楽協会会員、日本音楽集団作曲家団員。
4つのプロフィール 福嶋頼秀作曲
第1楽章 冬 〜プレリュード〜
第2楽章 春 〜バウンス〜
第3楽章 夏 〜ヒーリング〜
第4楽章 秋 〜ダンス〜
『4つのプロフィール』とは、日本の音楽の“4つの特徴”とか、“4つの季節の表情”といった程の意味です。この作品の中で私は、日本の音楽が持つさまざまな音楽的特徴を、現代的な感覚で、自由に展開しています。
各楽章ではそれぞれ、日本の音楽の幾つかの側面に焦点をあてています。具体的には、第1楽章の「自由な構成」、第2楽章の「はねるリズム」、第3楽章の「自然描写」、第4楽章の「笛・太鼓によるお囃子」などにその特徴が表れています。また、各楽章の持つ雰囲気は、「日本の四季」に対応してとらえることもできます。
(福嶋頼秀)
福嶋頼秀プロフィール:
慶應大学卒。邦楽器のための作品多数。東京フィル、東京都響、日本フィル、京都市響といった国内主要オーケストラからの編曲依頼など多数。現田茂夫、足立さつき、錦織健、佐野成宏の各氏などが演奏。
2003年チョン・ミョンフン監修・指揮のコンサートの企画・編曲を担当、DVD化される。教育プログラムの構成・司会も多数。土曜ワイド劇場、月曜ドラマスペシャル、ニュースステーション、ミュージカルなどの劇伴音楽も多数。
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