[大太鼓]
西洋楽器でいうBassDrumですが、打面に対して胴が深くなっています。胴は、欅・栓木などの木製で、打面(両面)になめした牛革が張ってあります。革面だけでなく、木の枠(リム)や胴の側面を撥で打ことも可能です。革面は打つ場所によって音色が違い、中心では低い倍音が、縁に近いところでは高い倍音が強く出ます。撥は直径3cm長さ45cm円柱の太撥(ふとばち)や、テーパーのついた長撥(ながばち)などが使用されます。(どちらも硬くて重い樫でつくられています。)木の枠や胴の側面を打つ場合の記譜は、×印を使用するとよいでしょう。
[締太鼓]
西洋楽器でいうSideDrum(もちろんSnareは無い)で、胴は欅、松、栴檀等の木製です。打面(両面)は牛革で、上下の革を2本の紐(調緒)で締め上げ、締め具合によって多少のピッチの調整が可能です。現在では、ボルトで上下の革を締め上げるタイプもあります。表革の中心には、直径4センチほどの鹿革が貼ってあり、通常その部分を打ちます。伝統的な奏法としてツクツクと余韻を止めて打つ「ツケバチ」があります。撥は、松、ヒノキなどの材質のものを使いますが、現代曲においてはマレット、ブラシ、または手での演奏例もあります。
いくつかのピッチの異なる締太鼓を使用することも可能で、一人で演奏する場合、五線譜に音高をつけて記譜するとわかりやすいです。
[桶胴太鼓]
西洋楽器でいうTom-Tomです。胴は桶状の細長い木で、打面(両面)に牛革を貼って、紐で締めてありますが、締太鼓と違って余韻は少なく高い音は出ません。通常、革面を撥でちますが、手で打っても独特の効果があります。撥は締太鼓と同様のものが使われますが、やはり現代曲においてはマレット、ブラシ、または手での演奏例もあります。
いくつかのピッチの異なる桶胴太鼓を使用することも可能で、一人で演奏する場合、五線譜に音高をつけて記譜するとわかりやすいです。
[大拍子]
楽器自体は締太鼓の構造と一緒ですが、胴長で打面に鹿革は付いていません。竹撥をしならせて打つため、締太鼓よりも甲高い音が出ます。
[小鼓]
一番近い楽器はトーキングドラムです。胴は桜で、真ん中がくびれています。革は両面ともなめした馬革を使い、この両面の革を2つの紐(調緒)で締めます。左手でその調緒を握り右肩に載せ、右腕を下から上に自然に曲げるように振り上げて、表革を打ちます。楽器の構造上、撥を使用することはありません。
「ポン」と「プ」・・小鼓の代表的な奏法。mf〜f
「タ」と「チ」・・・調緒を硬く握り、革面の淵を薬指で打つ奏法。mp〜p
「ポン」の奏法で、(タの場合は不可)調緒を握る左手の加圧によってポルタメントのようなものができますが、楽器の個体差があるため、音程の指定は不可能です。
乙の音(ポンとプ)甲の音(タとチ)の2種類の音高を分けて記譜すればよいでしょう。また、非常にデリケートな楽器のため、演奏前に最低20秒はチューニングの為の時間を持たせてください。
[大鼓]
やはり膜質の打楽器ですが、音色はWoodBlockに似ています。胴の素材は桜で、両面の革は牛革を使っています。小鼓より一回り大きな楽器ですが、両面の革は調緒で硬く締め上げている上、更に演奏前に革を火で炙り乾燥させるために、高音が出ます。表革が前に向くように左膝の上に置いて、左手で調緒(縦調)を握り、右手の中指に「指皮」といわれる和紙を糊で張り合わせたものをつけ、表革を打ちます。また、竹撥を使う奏法があり、この場合は両方の手が使える為、軽快なリズムが打てますが、見た目の威厳は損なわれます。
「チョン」・・革面を強くfで打つ。
「ツ」・・・・革面を弱くpで打つ。
「ドン」・・・ツと同じであるが、打った右手を革面に離さず付けておく奏法です。撥を使うときは「カ」という唱歌をもちいます。非常に軽い撥を使用しますのでフォルテッシモでは演奏できません。
打ち方には3種類ありますが、音色の差は判別しがたいため、音高も分けることなく強弱のみを記譜すればよいでしょう。
[楽太鼓]
西洋楽器でいうBassDrumで、胴の浅い「大太鼓」です。「大太鼓」とほぼ同じ音質で、とくに低音の響きがほしいときに用います。胴が浅いため、胴の側面のリムショットはできません。(縁のリムショットは可能です。)
[棒ささら]
長さ30cm、直径4cmくらいの木の棒にたくさんの切りこみをいれてあるものと、竹を縦に割いたものを擦りあわせて演奏する。しいて言えばギロ(guiro)に近いので、同様に記譜するといいでしょう。
[びんざさら]
数十枚の小さめの桧の木片を長い紐で編んであるものと、樫、または黒檀など硬い材木の大きめ(10cm×20cmくらい)の板を20枚程編んだ重いタイプの二種類があります。どちらもその両端を持って打ち合わせると歯切れの良い音がします。とくに重いタイプのびんざさらの強い一打はとても衝撃的です。また、左右に振るとロール(トレモロ状に記譜)のような効果もできる。
[笏拍子]
西洋楽器でいうSlap stickです。黄楊や桜や梅などの木切れを、一枚は手のひらと水平に持ち、もう一枚の薄い側面を使って打ちあわせます。
[拍子木]
西洋楽器でいうクラベスですが、本来は音楽の演奏のためではなく、歌舞伎等で舞台の進行を知らせるために使用する楽器の為、非常に大きな音を出すことができます。長さ20cmほどの2本の木棒(材質は樫)を打ち合わせます。
[鳴子]
WindChimeが竹で出来たものです。ウインドチャイムではやらない奏法としては、両手で吊り下がっている全部の竹を包み込むように打ち当てると歯切れのいいアクセントが得られます。
[木鉦]
西洋楽器でいうWoodBlockです。大きさも数種類あり、音も高低さまざまです。
[木魚]
本来は仏具ですが、現在ではTempleBlock(テンプルブロック)の名称で西洋のオーケストラでも使われています。大きさは数種類あり、音も高低さまざまです。
[板木]
長方形の大きな板(30cm×50cm×3cmくらい)を木づちで打ちます。通常片手一本で打つので、細かいリズムは適しません。
[キン]
本来は仏具です。材質は銅や青銅で、茶碗の形をしています。大きさはさまざまでピッチは定まっていません。たいへん長い余韻を持っています。本来の仏具としての奏法は縁の部分を専用の撥で叩くのですが、現代曲では、これをマレットで代用したり、硬目の撥を使用することもあります。また、特殊な奏法として、硬い撥を縁に添って擦り続けたり、コントラバスなどの弓で弾くこともあります。
[当たり鉦・コンチキ]
当たり鉦(当鉦)は摺鉦(すりがね)チャンチキともいいます。材質は青銅で、平底の手のひらサイズのゴングです。小型で軽めのものが当鉦、大きめで硬目の合金を使用しているのがコンチキで、両者の音質は違いますが、しいて言えばアゴゴベルに近いです。撥は原則として細い木の棒の先端に鹿の骨がついたものを使用するが、硬い撥ならなんでも良い。
1. 当たり鉦 最もこの楽器でよく使われる奏法は、音色、余韻を変えて打つ奏法です。左手の手のひらで当たり鉦を持って、右手に持った撥で中心を打ったり、その撥を擦るように左右に動かしたりします。その際に楽器を支えている左手の指を密着させたり、離したりすること(オープン、クローズ)で音色を変化させています。また、紐で手にぶら下げた状態で中心部や縁の部分を打ったり、現代曲においては、台の上に伏せた状態で置いて撥で打つ奏法もあります。
2. コンチキ 同じサイズのものを2個吊るして、同時に鳴らす事で出る音のひずみを楽しむのが伝統的な奏法です。また、コンチキはその重さのため、当たり鉦のように手で持って演奏することは不可能です。
[双盤]
コンチキをより大きくしたものです。撥は木づち、またはタマ撥(木製のマレット)を使用します。楽器についている紐を左手に持つか、又はスタンドにつるして打ちます。
[松虫]
当たり鉦をより小さくしたものです。紐がついていない代わりに足が3つ付いていて、台に置いて打ちます。サイズの違うものを複数使用することもあります。
[銅鑼]
通常、和ドラと呼ばれています。大きさは直径約40cmでTam-Tamとは違って、楽器の中央には突起があります。クラッシュ音は出ません。撥はクッションを着けた木槌、あるいは棒の先端に付いている球に柔らかい布を巻きつけたものを使用します。また、樫撥やタマ撥など、硬い撥を使用することもあります。
[妙八]
銅、青銅製のシンバルです。直径約30cmで、一つをスタンドに固定し撥で打つ方法や、2枚を打ち合わせる方法があります。シンバルのような長い余韻はありません。
[チャッパ(銅拍子)]
銅、又は鉄でできた小形のシンバルで、常に打ち合わせて演奏する。妙八よりも高い音がする。
[巫女鈴]
西洋楽器でいうSleighBells。音色はJinglesに近い。
[巡礼鈴]
単に鈴(レイ)ともいいます。小さなHand-Bellですが、音程は指定できません。
[オルゴール]
大きさの違う4個から5個の鈴(リン=キンをとても小さくしたもの)を一つの板に並べつけたもので、長い余韻があります。個々に撥で鳴らしたり、あるいは、並んでいるそれらを端からアルペジオのように撥で鳴らします。
(監修:望月太喜之丞・秋岸寛久)
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