3弦のリュート族、ロングネック、フレットのない差込み棹の撥弦楽器。胴皮に猫、または犬の皮を張り、大型の撥で撥弦します。
三味線は棹の太さと胴の大きさによってさまざまな種類がありますが、ここでは音楽集団の合奏で使用されている細棹と太棹(義太夫)について説明します。
[調絃と音域]
三本の糸(絃)は低いほうからI、II、IIIとあらわします。調絃の絶対音高は決まっていませんが、Tの絃は細棹ではHからD(張力が弱いと音量が不足する傾向があるのでなるべく高く設定したいのですが、これ以上になると絃が切れるなどのアクシデントが発生しやすくなります)、太棹ではGからAに設定されます。(8の字つきの高音部記号で記譜するのが一般的です)。
細棹 |
太棹 |
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音域は調絃によって変わりますが、ほぼ以下のとおりです。
細棹 |
太棹 |
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古典において伝統的に使われる調絃は「本調子」「二上がり」「三下がり」などが代表的で、これらは自然倍音によってよく響く調絃です。現代曲においては増4度を取り入れた調絃などが使われることもあります。また、曲の途中で調弦を変えることもできますが、落ち着くまでに多少の時間が必要です。
[奏法]
1. 左手の技法
(1)ハジキ 左手の指のみで糸をはじいて音を出す。
(2) スリ、コキ 押さえた指をすって余韻の音程を変化させる。
(3) ウチ 左手の指で糸を打つ。
(4) ウラハジキ 左手の3
2. 右手の技法
(1) 通常のバチ弾き 基本的には、胴の上から下に向かって弾く。
(2) スクイ 絃を下から上にすくい上げる。(「弾いてスクう」を連続で細かく行うとトレモロも可能だが、あまり得意ではない)
(3) ピチカート バチを使わずに右手の指で弾く。(pizz.と記述)
(4) コカシバチ 複数の糸を速くコカして弾く。
3. 左+右
(1) スクイ+ハジキ 弾いてスクってハジく。速いフレーズを弾くときにしばしば使われる。
(2)コカシバチ+ハジキ 複数の糸を弾いたのちハジく。スクう場合もある。
(3) カケバチ バチで糸をミュートしたまま左手指でハジく。(キッキッという音がする)
4. その他
(1) 「さわり」 Tの糸の開放絃を弾いたときに、「ビーン」という独特な音がする。Uの糸、Vの糸を弾いたときにもTの開放弦の倍音であれば、Tの糸が共鳴してさわりが鳴る。
(2) 音程の飛躍 フレットがなく、棹が長いのでポジションの離れた音程の飛躍は困難を伴う。速いフレーズには開放絃をうまく取り入れると効果的。
(3) 重音 2本以上の糸の違うポジションを同時に押さえることは困難。開放絃との重音はまったく問題ない。(非常に近いポジションで、テンポの余裕があれば、ダブルストップも可能)
(監修:山崎千鶴子・秋岸寛久)
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