創立メンバーであり、指揮者・代表として日本音楽集団と共に長年歩んできた田村拓男名誉代表が創立時からを振り返る回顧録。
◆夏の合奏研究会、そして「萌春」が誕生した1971年
 創立してから8年目の1971年は、3回の定期演奏会と伝統音楽シリーズTの4回の演奏会が開催されました。第13回定期(都市センターホール)では「凸(とつ)」三木稔作曲の舞台初演、第14回定期は初の関西定期(大阪公演/厚生年金会館中ホール)として実現、第15回定期は東京の都市センターホールで長澤勝俊作品特集、「萌春」の初演もありました。
 「萌春」という曲名は後からつけられた名前で、初演時は「尺八・箏二重奏曲」。長澤さんが次なる大編成の曲を目指して悩んでいる時に宮田耕八朗さんのアドバイス「《春の海》長澤版を作ったらどうですか」という一言で吹っ切れて生まれたのだそうです。タイトルの「萌春」も宮田さんの提言だったそうで、歳時記カレンダーの2月29日に「草木萌動(そうもくきざしうごく)」と…。陽気にさそわれ草木が萌え出す頃を表わしたこの言葉は、宮田さんが長澤さんに提言したといわれる「萌春」の出所か。
(写真は「萌春」初演の第15回定期ポスター)

 夏期合奏研究会も年々盛況を続け、3回目の1973年には8月7日〜13日までの1週間を前期と後期に分けて参加者を募集。箏55、尺八89、十七絃7、三絃10、笛4、見学者6。
 練習曲は大編成曲「子供のための組曲」長澤勝俊作曲、「ダンス・コンセルタンテ」三木稔作曲、小編成曲「パーティシペイション」三木稔作曲、「尺八三重奏曲」清瀬保二作曲、「和楽器のための三重奏曲」小山清茂作曲、「まゆだまのうた」長澤勝俊作曲、「尺八・箏・十七絃のための四重奏曲」藤井凡大作曲、
 「ダンス・コンセルタンテ」は、第3回夏期合奏研究会のために書かれたもので、経験の浅い演奏者でもやさしく楽しく合奏に参加できるように、また演奏会用としても使えるように書かれたものでした。
 音楽集団全員の参加でパート練習や、リトミック、五線譜の指導、毎晩開かれる演奏会では参加者や団員入り混じっての発表。そのあとのパーティーが特別に楽しく、交歓を呼び、情報・経験を持ち帰った参加者らは各地で合奏団を結成するなど、現代邦楽の発展につながる場となりました。
(写真は、第10回夏期合奏研究会チラシ)